内部統制報告制度の運用の実効性の確保について(その4-新興企業)

【新興企業の内部統制の不備の特徴】

新興企業とは東証1部以外の上場企業のうち、株式公開直後である会社のことです。

株式公開直後であるため、創業者が現在も社長のままであることが多くあります。創業者であるがゆえに社内での立場はとても強く、他の取締役・監査役はほとんど発言権がなく、社長の業務執行の監督・監査も十分にできていないのが実態です。

また、会社ができて間もないことや、十分な人員が配置されていないことから、基本的な内部統制が表面的・形式的にしか整備されていないこともあります。

したがって、全社的な内部統制、業務プロセス、決算・財務報告プロセスそれぞれで多くの不備が認められます。

なお、株式公開後1年以内に重要な不備を開示した企業は6社あり、「株式新規公開におけるディスクロージャー制度の信頼性を損ねたとも言い得る」と厳しい指摘がされています。内部統制の不備は一義的には会社の責任ですが、株式公開を支援した証券会社や監査法人も暗に批判しているものと思われます。


【上記を踏まえた考察】

新興企業では、強大すぎる創業者を暴走させないための仕組みづくり、すなわちコーポレート・ガバナンスが何にもまして重要となります。社長の業務執行をしっかり監視し、諫言すべきときに諫言できる体制をまず構築しなければなりません。

報告書では内部通報制度の導入・強化も重要と書かれていますが、内部通報制度を上手に使いこなすのはたいへん難しいです。むしろ、新興企業では従業員がまだ少なく、通報者が特定される危険性が非常に高いでしょう。そうであるならば普段から自由に発言できる雰囲気づくりをするほうが、いっそう大事なこととなります。新興企業は内部統制の仕組みが弱いのが弱点ではありますが、その分、従業員個人の能力に依存するところもあるため、創業者もそのような従業員の発言を無視できません。

そのような従業員がいるうちに、また彼らが中心となって、基本的な内部統制をしっかり定着させていく必要があります。


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JIM ACCOUNTING

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