最後のステップ5は収益の認識です。
【意義】
ステップ1とステップ2で会計処理単位である履行義務が決定され、ステップ3とステップ4で履行義務の取引価格が決定されました。ステップ5では履行義務が充足されたときにあるいは充足されるにつれて、当該取引価格を収益として認識します。
【主な論点】
①履行義務はいつ充足されるのか?
収益の認識で問題になるのはそのタイミングです。収益はモノまたはサービス(まとめて資産という)が顧客に移転することによって、履行義務が充足されたときまたは充足されるにつれて認識するとされ、資産が移転するのは顧客が当該資産に対する支配を獲得した時または獲得するにつれてとされています。(会計基準35項)
上記を整理すると、以下の通りです。
(1)履行義務は一時点または一定の期間にわたり充足される
(2)履行義務は顧客が資産に対する支配を獲得した時または獲得するにつれて充足される
(3)収益は履行義務が充足されたときまたは充足されるにつれて認識される
(1)については、モノの販売であれば通常履行義務は一時点で充足されますが、サービスの提供であれば通常一定の期間にわたって履行義務が充足されます。ここでは、履行義務の充足が一時点なのかあるいは一定期間にわたって充足されるのかの判断によって、収益の認識時期が異なるため論点となります。
(2)は支配の獲得の要件(会計基準38項、39項)を満たしているかどうかを、どのように判定するかが論点になります。特に、日本企業では出荷基準で収益を認識することが多いですが、出荷時点で顧客に支配が移転しているのかどうか慎重な検討が必要になります。
(3)では一定期間にわたって履行義務が充足されるときに、その進捗度をどのように見積もるかが論点になります。従来は主に工事契約に関して進捗度が用いられてきましたが、今後は必ずしも工事契約に限りませんし、また、進捗度の計算方法も総原価に占める発生原価の割合に限られませんので、取引毎にどの方法が適切なのかをしっかり検討しなければなりません。
【内部統制上の課題】
上記についてもやはり取引毎、論点ごとにしっかりとした検討と文書化が必要であり、当該検討結果にしたがった処理を行える内部統制の構築が求められます。
例えば、顧客による支配の獲得が出荷時点ではなく検収時点であると結論付けるのであれば、収益を検収時点で認識するための証票の入手、当該証票を根拠とした収益の計上と第三者によるチェックといった内部統制が必要になります。
営業部門と経理部門の従来以上のコミュニケーションが必要であることも今までのステップと同様です。
JIM ACCOUNTING
名古屋市名東区にある公認会計士・税理士事務所です。
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