2017年7月に草案が公開された「収益認識に関する会計基準」(以下、本基準)ですが、コメント募集は同年10月にすでに締め切られ、今月ようやく正式決定版が公表される予定です。
公表され次第、5回(予定)に分けてその内容について簡単に解説させていただきますが、ちょっとフライングして、まずは本基準の特徴とその影響について説明させていただきます。
はじめにお断りしますが、以下はあくまで私が実施した調査・見方・考え方にもとづいて書かせていただいております。
【特徴その①】 包括的な基準であること
従来の収益認識に関する会計基準は、「企業会計原則」に一般的な規定、「工事契約に関する会計基準」や「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い」に工事やソフトウェアについての個別の規定があるのみであった。(ちなみに2009年7月に「我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)」が公表され、個別の取引について会計処理が示されているが、これは強制力のある会計基準ではない。)
本基準は物の販売とかサービスの提供とか対象を特に限定せず、一部の例外を除き、ほぼすべての売上取引に適用されます。したがってどうなるかというと、すべての取引が対象とされることによって、すべての産業・会社(中小企業を除く)が、その売上取引の会計処理を再検討しなければならなくなります。
【特徴その②】 営業部門にも関係すること
1998年以降に始まった会計ビッグバンでは、連結重視への転換、税効果、金融商品、退職給付、減損会計などの大型の会計基準が次々に公表されました。しかし、これらの基準の対応に追われたのは、主に会社の経理・財務・人事・総務などの管理部門が中心でした。
もちろん、本基準への対応は今回も経理部門が中心になって進むと思われますが、経理部門だけでなく営業部門も巻き込まなければ、とても対応できません。というのも、会計処理を検討するためには取引の実態を今まで以上に理解しなければならず、それには営業部門の協力が不可欠だからです。また、本基準によって売上の金額が変わってきたり、認識する時期や方法なども変わってきますので、営業部門にとっても無関心ではいられません。
経理部門と営業部門のスムーズなコミュニケーションを可能とする内部統制の構築も必要になるでしょう。
【特徴その③】 見積りの要素が含まれること
従来の基準では、売上は実現主義の原則により、引き渡した財貨に対する対価の成立(確定)をもって認識されることとされていました。したがって、売上の金額そのものを見積りで計算することは通常ありませんでした。(返品などが見込まれる場合は、別途、返品調整引当金を積みますので、売上金額そのものは対価で計上されます。)
ところが、本基準では変動対価がある場合は、あらかじめ見積りで売上金額を計上することになり、対価=売上金額ではなくなります。このあたりは違和感を覚える経理部門の方々もいらっしゃるかもしれません。
【特徴その④】 噛めば噛むほど味が出る
本基準はIFRS15号をベースにして開発されたものであり、IFRSは総じて一読して難解という性質を持ちます。IFRS15号=本基準は特にそうで、はじめは理解するだけで数か月かかるでしょう。しかも、本基準を実際の取引に当てはめてみて、初めてまた本基準のいわんとするところがわかることもあります。
本番適用までには3年間の猶予がありますが、今すぐにでも検討を始めないと間に合わなくなる恐れがありますので、早めの検討をお勧めします。
JIM ACCOUNTING
名古屋市名東区にある公認会計士・税理士事務所です。
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